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  • Shiho

もったいない精神を今こそ見える化しよう



ポテトチップスの製造販売を行うカルビーは、昨年、非常に日本的なマーケティングキャンペーンを展開しました。


彼らは、84%の消費者が食べた後のポテトチップス包装を小さく折り畳んでいることに気付いたのです。折り畳むことで廃棄物の量を減らす利点があり、環境への負荷を減らすことに繋がります。


そこで、カルビーは"オリパケ "というキャンペーンを始めました。消費者が折り畳まれた包装写真をカルビーのアプリで撮影すると、ポイントに移行され、ジャガイモの栽培体験などのプレゼントに交換できるものです。




日本とサステナビリティ


このキャンペーンは、日本の多くの食品会社が、エネルギーや原材料の使用量を減らし、廃棄物を減らすことを優先する事で、サステナビリティを製品に取り入れている現状を表しています。日本では、持続可能な将来を環境面から捉えがちで、社会面(教育やインクルージョンなど)や、人権(健康や福祉、平等など)が後回しにされることが散見されます。と同時に、持続可能性は経済的利益を生み出すためのエンジンではなく、費用と捉えられることも多いのが現状です。


また日本の食品会社の多くは、カルビーとは異なり、利益の一部を社会貢献活動に還元するというCSR(Corporate Social Responsibility)の段階に留まっています。一方、世界では既に、原材料の調達から、製造、流通、消費、廃棄に至るまでの「ライフサイクルやサプライチェーンの持続可能性」に焦点が当てられています。これは、特定の人たちだけが利益を得るのではなく、製品の製造や販売に関わった全ての人が平等に分け前を得られるという、これまでとは異なるアプローチです。


現にライフサイクル・サステナビリティー・マネジメントへの関心の高まりを受けて、フランスでは5年以内に製品・サービスのカーボンフットプリントのパッケージへの記載(一部産業への)義務化の規制が可決されました*。


日本は、2020年のSDIインデックスおよびダッシュボードレポートにおいて、166カ国中17番目ですが、日本の消費者のサステナビリティ への関心は高まっています。2019年に実施した調査によると、81%の消費者が、現在は行っていないが、持続可能な方法で生産・製造された製品をより購入したい、と考えていることが分かりました。楽天インサイトによると、コロナ前*と比較して、サステナブルな方法で今後は買い物したい、と考えている人は32%います。サステイナブルな商品やオーガニックな商品に対するニーズは十分に満たされておらず、ビジネスチャンスがあると言えます。


実は独自のサステナブルな哲学を、日本人は大切にしています。「もったいない」とは、仏教に由来する言葉で、今あるものを「再利用」「リサイクル」「削減」「感謝」するという行動を表しています。また、19世紀末の日本の資本主義の父、渋沢栄一は、自分の利益よりも公共の福祉を優先しました。


しかし、日本経済が急成長した際、なぜか西洋企業のビジネス手法を輸入することに忙しく、私たちの持続可能な生き方をどう継続していくかにあまり注意を払いませんでした。日本には土壌があるので、サステイナビリティの動きが今後急速に高まるのでは、と期待せざるを得ません。



ザ ダッチー オーガニック

イギリスのThe Duchy Organic(ザ ダッチー オーガニック)は、サステナビリティにおいてユニークな経験とアプローチを持っています。


The Duchy Organicは、1990年にチャールズ皇太子が発案したブランドで、2010年から高級スーパーのWaitrose(ウエイトローズ)が運営しています。1983年以来、Waitrose社はオーガニック食品を日常生活の身近なものにしており、The Duchy Organicの製品群は300以上にもなります。


The Duchy Organicは、オーガニックを購入することは、環境と調和した持続可能な方法で食料を生産し、最高基準の動物福祉を満たし、農地で動物らしい生活の実現を支えることだとしています。パッケージでは、ロゴとオーガニックのフォントに金色を採用し、皇太子の慈善活動である持続可能な農業の発展を支援するブランドの約束が目に飛び込むようにデザインされています。また、Good causes(慈善事業)とGood farming(良い農業)は、大きな手書きの書体で、他とは一線を画す様になっています。


The Duchy Organicは、象徴的なブランドリーダー、明確なビジョン、消費者や農家に約束したことを実現してきた実績、そして素晴らしいブランドコミュニケーションを持ち合わせているブランドです。そしてビスケットの味が美味しいという事も付け加えておきましょう!



英国ブランドからの学び


上記から日本企業が学べることは、サステイナブルな顧客のセグメンテーションです。The Duchy Organicは、高級でも安価でもないプレミアムオーガニック市場をターゲットにしており、それを軸に商品提供、チャネル、ブランドコミュニケーションを展開しています。


現在の日本市場では、サステナビリティを積極的に支持する人、サステナビリティやオーガニックに付随する安心感や安全性を評価する人、サステナビリティをカッコイイと思う人の3グループがあり、それぞれ異なるモチベーションで動いています。


第一グループは、企業や製品の目的や価値感、第二グループは機能、そして第三グループはストーリーやデザインに、共感や愛着を持ちます。そして第二グループは感じずとも、第三グループは、日本で主流となっているミニマムスタイルのオーガニックパッケージに物足りなさを感じているかもしれません。「オーガニックは不要なものを含まない」という考えは正しいですが、「つまらなくて良い」という訳ではありません。


加えてサステナビリティを前面に押し出した商品群を、もっと日本市場で発売しても良いのではないでしょうか?カルビーであるならば、責任を持って調達されたジャガイモを使用したオーガニックシリーズのポテトチップスの展開です。製品のライフサイクルの観点から環境、社会、人に対する持続可能性も考えた製品であればなおさら消費者の共感を呼ぶでしょう。


また、日本の消費者の70%が、有機JASマークなどの認定の意味を理解していないと回答しています。ここから、「この商品を購入することで、より良い世界を作ることに貢献できる」というダイレクトなメッセージを持つ商品が求められており、ブランド名、ブランド構造、ビジュアル/バーバル・アイデンティティ(見え方・伝え方のガイドライン)が、サステナブルなブランドの明確なポジショニングを手助けするでしょう。


最後に「能ある鷹は爪を隠す」に代表される日本のコミュニケーションスタイルは、脇に置いておく必要があります。ブランドが消費者と対話するとき、消費者が置かれている状況の課題にブランドが取り組むことができれば、より一層の共感と信頼を得ることができます。The Duchy Organicが持続可能な農業を支援しているように、消費者は「環境に優しい」という言葉を小さな文字で添えておくのではなく、インパクトのある大胆でエシカルなブランドを待っているのです。



*Reference

https://www.calbee.co.jp/newsrelease/200914a.php

https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/jp/Documents/consumer-business/cp/jp-cp-consumer-after-covid-19-1.pdf

https://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2019/11/20191118.pdf



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