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  • Shiho

コロナがブランドに投げかけたコト



新型コロナウィルスによるパンデミックは、私たちに多くの変化をもたらしました。


まず、消費者と製品やサービスとの関係性が変わりました。ロックダウンの初期に、スーパーマーケットで商品の無い空っぽの棚を見て、消費者はサバイバルモードになりました。生活必需品を手に入れるために一部の人達は争い、買い物に喜びを感じることはありませんでした。私たちはマズローの欲求5階層のうち、第一段階の生理的欲求を満たそうとしたのです。


普段の社会的交流から自分自身を隔離することで、多くの人々が忙しい生活から立ち止まり、一歩引き下がる機会も得ました。これは、人生が一夜にして劇的に変化し得ることを教え、人生で何が重要なのかという根本的な問いを投げかけました。


自然も私たちに警鐘を鳴らしてくれました。美しい景観よりも悪臭を放つ水辺で知られるイタリアのヴェネツィアでは、運河が清浄化され、魚や白鳥が戻ってきました。また、中国では工場からの汚染物質の排出が止まり、灰色の空が消えました。


このような体験が、これまでどのように、そしてこれからどのように、消費者とブランドとの関係に影響を与えるのでしょうか。



コロナがもたらした行動変化


コロナは、消費者に短い期間で新しいブランドを試すよう促しました。


例えば、イギリスでオーガニック食品の宅配サービスを展開するAbel & Co。彼らは、高品質のオーガニック食品の食卓への提供を使命とし、旬の野菜や果物を提供したり、化学物質の使用による過剰生産を抑えることで、二酸化炭素の排出やプラスチックの汚染を減らしています。


コロナ禍で食品宅配サービスへの需要が高まり、これまでの30年間の歴史上行ったことのない、新しいメンバーの募集停止するまでに至りました。コロナ後、多くの新規顧客が彼らのサービスを体験したことで、Adel & Coは優位な立場に立つことになるでしょう。注文のしやすさ、旬の野菜を楽しむ喜び、環境への負荷を減らした消費行動の素晴らしさを体験したのです。


言い換えると、コロナは、Adel & Coなどの新しいブランドを多くのお客様に紹介したのです。




パーパスドリブン


消費者は、ロックダウン中に「自分にとって何が重要なのか」より明確な考えを持つ機会を得ました。言い換えれば、「パーパス;企業の存在意義や目的」が、購入の意思決定に更に大きな影響を与えるようになったのです。ブランドの存在理由が、消費者の信条と一致していれば、消費者は喜んでブランド・コミュニティの一員となるでしょう。


Abel & Coのもう一つの興味深い例は、ロックダウン中に導入された「Food on the table」という新製品です。通常はレストランに食品を納品するホールセラーに自社のプラットフォームを使ってもらい、驚いたことに非オーガニック商品も含め、消費者に届けるというものです。


このサービスを開始した理由を、彼らは明確に説明しました。それは、お客様、ホールセラー、Abel & CoにとってWin & Winであるということです。消費者は食材の配達枠を確保するチャンスが増え、(注:イギリスのロックダウン初期は、食品宅配サービスの需要が増え、配達の予約をすることも難しかった)Abel & Coは食品廃棄物を削減し、販売チャネルを提供することで卸売業者や生産者などの雇用維持に貢献したのです。明確な目的を説明すれば、お客様は長期的にみて、ブランドの取り組みを支持する可能性が高くなる良い事例です。



ブランドの言動一致


イギリスのサンドイッチ店Pret A Mangerは、この未曾有の事態にいち早く対応し、2020年3月下旬からNHS(公立病院)の労働者に、コーヒーの無料配布や割引を開始しました。多くのブランドは、「私たちはあなたの側にいます」や「ありがとう」というメッセージを発し、第一線で働く人々への感謝の気持ちを示しましたが、こうしたメッセージが行動を伴うことは多くありませんでした。利益を超えたPret A Mangerの機敏な行動は、パンデミックが終わった後も消費者の心に残り、将来にわたって消費者との良好な基盤となるに違いありません。


私たちがコロナ禍に置かれ、振り返ったもう一つの一面は、「サステナビリティー ・持続可能性」です。今後、持続可能性を念頭に行動する人が、益々主流になるでしょう。私たちは、大量消費が地球に与える影響を目の当たりにしてきました。安価な食品や衣料品などを入手できることから、大量生産や大量廃棄が世界のどこかで起きていることはわかっていましたが、私たちはそれを無視してきたのです。


コロナは、消費者が行うあらゆる選択とその環境への負荷との間に、明確な関連性を示したことで、消費者行動の変化をもたらしました。行動は言葉よりも雄弁です。消費者はより真剣に、しかも無意識のうちに、ブランドのパーパス(企業の存在意義や目的)の元、約束を守り行動しているブランドに、より親近感を持っていくのです。



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