top of page
検索
  • Shiho

ブランドマネジメント:集権 vs 民主



ブランドはどのように管理されるべきでしょうか?強力な一元管理、それとも民主的なガイドラインでしょうか?どちらの方法にもメリットとデメリットがあります。


但し、ブランドが「人々にとってのプラットフォーム」機能を担うことが近年多い事を念頭に置くならば、「それぞれのステークホルダーがガイドラインに従いながら、各々で対応を変化させていく」方法が、今後の主流となるのでしょう。



Airbnb


例えば、2020年12月に350億ドル規模で上場する予定のAirbnbは、プラットフォームとしての役割を持つブランドです。「どこでも一員であれる」がブランドコンセプトであり、220以上の国にある「コミュニティ」が彼らの商品です。


彼らのブランドマネジメントで最も特徴的な点は、Airbnbがすべてをコントロールすることは現実的ではなく、彼らの大切にする提供価値にもそぐわないということです。例えば、290万人いる旅先のホスト(受入れ側)は、従来のホテルサービスとの最大の差別化要因であり、ブランドに息を吹き込むブランドの具現者です。


AirbnbはどのようにしてホストにAirbnbブランドの導入を促し、「自分のブランド」としてブランドに適応していっているのでしょうか。それは、旅行者が行く先々で一貫したブランド体験をしてもらえる様、ホストにAirbnbの価値観に共鳴してもらっているのです。ホストが価値観に共感すれば、ゲストを住宅ローンを代わりに払ってくれている人としてではなく、友人のように扱うようになるでしょう。Airbnbが提供したいのは、Airbnbの顧客に、新しい友人であるホストを通じて帰属意識を感じてもらうことなのです。


私のAirbnbユーザーとしての体験からお話しすると、ホストが宿泊先のリビングルームに、手作りの地元ガイドブックと共に歓迎してくれることがよくあります。見知らぬ土地での一日の始まりに素敵なコーヒーを買える場所や、景色を眺めながらカクテルを飲める場所を教えてくれるのです。そしてこの小さな行為が、Airbnb体験を大きく高めてくれます。インターネットでは得られない貴重な情報に感謝すると共に、ちょっとした「いいね!」を感じる瞬間です。小さな「いいね!」の積み重ねが大きな「いいね!」となり、それがお客様の心の中で、ブランド共鳴やブランド価値に繋がっていくのだと思います。


例えAirbnbがガイドラインを作ったとしても、「どこでコーヒーを飲めるか」というような些細な好意を含むような指示はない、と想像できます。更に、旅行者からAirbnbの従業員まで、様々なステークホルダーまで届き、Airbnbの存在意義との整合性を担保していくという点で、価値の共有がいかに有効であるか、ということにも気づくでしょう。


なお、Airbnbの社員は、ホストの創り出すブランド体験を支えるツールを開発しています。例えば、YouTubeチャンネルや、ホスト同士のプライベートフィードバックシステムなどです。旅行者は、管理された方法ではなく、偽りのない有機的な方法で、コミュニティの絆を深めることに貢献できるのです。ブランドオーナーであるAirbnbは、民主的にブランドが管理される様、その黒子に徹しています。



ここで思い出すのが、深い顧客体験を創造に成功したもう一つのブランド、リッツ・カールトンです。リッツ・カールトンは、「私たちは紳士淑女であり、紳士淑女にサービスを提供します」というクレドを掲げており、これは言語化されていないお客様の願い叶えることで、サービスを次のレベルに引き上げるという、スタッフ一人ひとりの自主性と才能を表現しています。このクレドが、お客様にサービスを行うスタッフ一人ひとりの言動の羅針盤となり、お客様のブランド体験を形作っていくのです。リッツ・カールトンとAirbnbでは、ターゲットとするお客様は異なりますが、ブランド経営を成功させるための要素は共通しているようです。


ブランドは、時間とお金をかけて愛情を注いだ子供のようなものですが、ある時期から自分の世界を築き始めます。あなたの人生にとって何が大切なのかを示し、優しく導いてあげる必要があります。ブランドも同様に、少なくともそのブランドが何を表しているのかを示す北極星の様な指針があれば、ブランドがその価値を失うほど大暴れし、自身を見失うことはないでしょう。




* 後日上場時、時価総額865億ドルに達した

https://www.cnbc.com/2020/12/10/airbnb-ipo-abnb-starts-trading-on-the-nasdaq.html




bottom of page