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  • Shiho

カントリーブランド:2020年ブランド力 No.1は日本



世界がフラットになってきたとはいえ、国という枠が、誰もが共感する重要なものであることに変りません。国とは、GDPのような経済指標で単純に表現できるものではなく、社会的、政治的、文化的な側面を考慮する必要があります。


グローバルにブランドマネジメントサービスを提供するFutureBrandが、2020年11月に発表したカントリー・インデックスは、バランスのとれた見解でカントリー・ブランドを理解することができます。本レポートは、「観光」「遺産・文化」「生活の質」「ビジネスの可能性」「価値観」「生産(製品)」*を、世界中の専門家2,500人が評価しています。


いくつかの重要なインサイトをご紹介します。



2020年について


FutureBrandは、『2020年は、現代史の中で最も非凡な年の一つとして語り継がれるだろう』と述べています。危機的状況と世界にとって破壊的なウイルスの年であるのです。そしてこれまで以上に、人々は環境問題や安全・安心、政治について語りました。


2020年は、現代史の中で最も非凡な年の一つとして語り継がれるだろう。

今年の良いブランドの重要な特性として、自ずと「レジリエンス(しなやかさ)」が注目されました。


まず第一に、国というブランドは深い回復力を持ち合わせます。一時的な要因に影響されることが少ないのです。第二に、ブランドにとって目に見えない課題を想定し、それに対応する能力は、現在の状況では必要最低限となります。もし時代が違っていたら、レジリエンスは、心理的に近いものではなかったかもしれません。興味深いことに、人間のパーソナリティにも、ブランドと同様に「可塑性(柔軟性)」と「安定性」という2つの次元*があることが明らかになり、2020年は、2つの絶妙なバランスを取ることの重要性を教えてくれました。


優れたブランドは、ステークホルダーが存在する世界から生まれ、その中で生きているということを再認識するのは大切です。言い換えれば、周りにいる人たちとブランドとの関連性です。たとえ最先端のテクノロジーを搭載した個性的なブランドであっても、課題を解決し、消費者を代弁するものでなければ評価されないかもしれません。コロナウィルスの大流行によりお客様の行動や価値観が変化したことで、お客様とのつながりが失われ始めたり、得られたりするブランドを多く見てきました。ブランドのステークホルダーに対してより頻繁かつ迅速に対応できる能力、いわゆるアジリティは、2020年のブランドにとってもう一つの重要な特性です。



日本


日本は、2020年のFutureBrandの国別指数で、2年連続で1位の座を維持しました。人々は日本に対して、「文化的に魅力的」「最先端」「ハイテク」「成功」などのフレーズを使用しました。日本が高得点を獲得したカテゴリーは、これらの言葉と一致しています。日本が高く評価された項目には、「芸術・文化の継承」「優れたインフラ」「高度な技術」「旅行先としての魅力」が並んでいます。


「レジリエンス」について言えば、日本はコロナの危機管理を上手くやってのけています。日本は、国民の健康と経済をしっかりと守ってきた数少ない国の一つです*。日本は多くの危機に見舞われてきました。特に、地震、豪雨、台風などの自然災害が多く、2019年には被害額が1兆8,000億円を超えた台風「ハギビス」が発生しました。このように人間の生活や社会、経済に課題が生まれる度に、日本はより強くなる方法を見つけてきました。


また、「レジリエンス」と「安定」のバランスが絶妙であることも注目されます。スイス(第2位)やノルウェー(第3位)と同様に、日本は安定性と信頼性で大きな評価を得ています。また、日本の特徴は、人々の心に届いていることです。スイスやノルウェーでは「憧れ」が大多数を占めているのに対し、日本では45%の人が「情熱・夢中」と答えています。「情熱・夢中」は「憧れ」よりも行動に繋がる可能性が高く、それはブランドを受動的に観察するのではなく、より深く関与することを意味します。文化的な魅力とハイテクのコントラストは、人々が日本を訪れ、日本をフォローする理由なのかもしれません。


日本が改善すべきカテゴリーは「価値観」です。日本のジェンダー平等は、2019年のWEFランキングで153カ国中121位に位置しています*。日本政府はこの問題に取り組んでいますが、その結果は横ばいで、これを変えるには時間を要します。


上記から総合的にわかるのは、日本は人を住むために招くこと、すなわち慎重な分析や政策立案が必要な移民政策ではなく、インバウンド観光への投資の継続が最善であるということです。2019年に海外から日本を訪れた人は3,190万人(対2009年比470%+)*で、2021年のオリンピック、2025年の万博が追い風になると予想されます。この成長の瞬間に日本が考えてほしいのは、サステナブル・ツーリズムです。次の世代が日本の文化や自然、歴史の美しさを継続して楽しめるような、持続可能なエコシステムを構築するべきなのです。



2014年と2020年の比較


アラブ首長国連邦


2020年UAE(アラブ首長国連邦)は、2014年から10位上昇し、9位となりました。UAEは、コロナへの対応において、厳格なルールを適用し、ワクチンを迅速に展開するなど、優れたリーダーシップを発揮しています。また、ビジネスや観光分野では、文化的意義や持続可能性・環境への配慮が高まっており、それぞれ6ポイント、8ポイント上昇していることが特徴的です。UAEは、中東の力の中心地なのです。


UAEは歴史的に、自分たちが提供しているものや自国の位置づけを世界という文脈の中で理解し、生き残りと繁栄のために行動すること、つまりレジリエンスに優れています。隣国のように石油が豊富にあるわけではありませんが、1980年代以降、UAEは物資の中継貿易や金融市場としての有用性を確立してきました。UAEの変革を支えたのは安定性であり、湾岸戦争や9.11の際にも、UAEは競合国に比べて安全で安定していることを世界に示しました。今後の発展を支えるのは、その価値観です。世俗的国家(政教分離を採用し、政教一致を排する世俗政策を行う)であるUAEは、その価値観によって、市場開放、持続可能性への関心、中東における女性の能力開花支援などをリードできており、それらはUAEに更なる競争上の優位性をもたらしています。



アフリカ


中南米とは異なり、アフリカのすべての国が6年間でランキングを向上させました。アンゴラ(ランキング外から37位)、アルジェリア(ランキング外から34位)、ケニア(65位から46位)など、大幅な差をつけて順位を上げた国も見られます。


アンゴラは、2002年に内戦が終結し、その後政治的にも社会的にも安定しています。アンゴラは、観光面でも(多様な自然景観と多様なアンゴラ民族が存在)、ビジネス面でも(アフリカ第2位の石油輸出国であり、巨大な水力発電所が存在)大きな可能性を秘めています。



要約すると、国というブランドは、社会的、経済的、文化的にバランスのとれた要素で評価される必要があります。なぜなら、国ブランドは人々によって所有されるものだからです。人々は、その国の様々な側面からの情報を咀嚼し、そこから生まれる連想を通じ、その国への時間とお金を投資(住み、訪問し、投資し、そこから商品やサービスを購入する 等)に自信を持つのです。


平和は世界の基盤であり、それは国ブランドにとっての「安定」です。2020年は、政治のレジリエンス(しなやかさ)が、経済、環境、健康の安定につながることを再認識させてくれました。変動性、不確実性、複雑性、曖昧さがある現在の世界において、レジリエンスは次のゴールへのパスポートとなります。レジリエンスと安定の絶妙なバランスが、ブランドをユニークなものにするのです。さらに「価値観」は、新しい政策や社会に対して、人々がどのように理解し、反応し、成功していくかを示す、将来に向けて非常に重要なものです。




*Reference:

1. Six FutureBrand Country Index with sub categories

Tourism: Tourism Attractions, Value for Money, Desire, Resorts/Lodging, Food

Heritage & Culture: Heritage, Historical Points of Interest, Art & Culture, Natural Beauty

Quality of Life: Health & Education, Standard of Living; Safety & Security, Live/Study There

Business Potential: Good Infrastructure, Advanced Technology, Good for Business

Value System: Political Freedom, Environmental Friendliness, Tolerance

Made In: Authentic, Quality, Unique; Desire


3. ourworldindata.org/covid-health-economy

5. www.tourism.jp/en/tourism-database/stats/inbound/


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