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ブランディング視点からの地域活性化



ブランディングは、製品やサービスだけでなく、都市や地域、更には国に至るまで、様々な分野の変革に役立ちます。今回は、ブランディング手法による社会の活性化、地域経済の活性化を行う「場所ブランディング」についてご紹介します。



一つの目標の元に人々を纏める


場所ブランディングの主なステークホルダーは、住民、行政、企業の3つです。この3つのステークホルダーは、一見すると異なる関心事を持っているように見えますが、それらが互いに繋がっていることも多く、明確なビジョンで纏めることができます。




長野県の川上村は、レタスの栽培に適した気候である標高1,300mの高地に位置します。高齢化した住民は、次世代のためにコミュニティを維持したいと考え、行政は医療費を削減したいと考え、企業(農家)はレタスの生産者として、市場での明確なポジションを確立したいと考えていました。


村長が掲げたビジョンは、「日本一幸せな人たちが集まる地域をつくる」。それを実現するために彼らが選んだのが、テクノロジーでした。これにより最高品質のレタスを生産できるようになり、一人当たりの所得(約2,500万円)、納税額、出生率が向上しました。さらにこの村では、地域の保険や給付金、医療や高齢者介護を総合的に管理するシステムを導入し、医療費を全国平均よりも低く抑えることに成功しました。


人が集まり、協力し合うことで、ビジョンを現実のものにすることができるのです。場所は万人の共通財産であるため、さまざまな背景や視点を持った人達を巻き込むことが重要です。合意が得られなければ、道は険しいものになるでしょう。実際、場所ブランディングには、社会、経済、環境など、様々な職種の人たちの意見も必要です。そのため、ビジョンを示すことは、一つの方向に向かって協力し合う基盤となるのです。


人々を繋ぐビジョンを見つけるにはどうすればいいのでしょうか?ブランドは、ステークホルダーにとって関連性があり、偽りがなく、ユニークで、インスピレーションを与えるものであれば、傑出したものとなります。これは場所にも言えることです。よって、文化や歴史、自然に目を向けることは素晴らしい起点となるでしょう。なぜなら、あなたが活性化させたい場所の、何千万もの人達の活動の積み重ねが、文化や歴史、そして自然を作っているからです。


このプロセスは、宝探しのようなものだと言えます。文化、歴史、自然、コミュニティ、社会、そしてステークホルダーを取り巻く世界との交わりを発見することが重要です。加えてより多くの人々の背景や興味を引き出すためには、マクロとミクロの視点を行き来する必要があります。



ビジョンは、良い時も悪い時も、人々の心の拠り所に


場所ブランディングの時間軸は、通常長いものです。全ての活動(=ブランドを作る活動)が何を目指しているのかという、場所のビジョン(=ブランドの目指すコト)を明確にすることで、世代を超え受け継がれる継続的な取り組みを支えます。


例えば、日本最高峰の富士山の近くに位置する静岡県三島市。三島市は、富士山の水脈から湧き出る清らかな水で知られています。グランドワーク三島は1992年に設立されたNPO法人で、その起源は1970年代後半の英国にまで遡ります。


グランドワーク三島は、三島の水辺を活性化させるために、これまでに50以上のプロジェクトを実施してきました。その中でも、汚染された源兵衛川の再生は有名で、今では水の世界遺産に登録され、今では住民や観光客のための美しい散歩道が隣接しています。


彼らの方針は、計画と実行の双方から積極的な取り組みを行うことです。なぜ彼らは28年間も、ゴミやヘドロに溢れた川などに向かい合ってこられたのか… それは自分たちの努力の先にある「愛する故郷を作りたい」気持ち、つまりビジョンを強く実感していたからです。またその目標を共有する仲間もいました。


ビジョンは、NPOの支援者の大半を占めるボランティアに対しても、苦しい時期や長年の努力を乗り越える手助けしました。つまり、人々にビジョンを明確に伝えて可視化する事で、持続的にリソース(人や資金)を集めることができたのです。


先進国を中心に、地方の活性化が加速しています。中央政府は、補助金を配り続けるのではなく、地方を自立させたいと考えています。しかし中央政府は、経済活性化の多様な要求に、柔軟に対応することに苦労しており、この活動は地方とその土地の人々が主導するのが最善という事を理解しています。


場所のビジョン(=場所というブランドのビジョン)と場所(=ブランド)を作る活動は、これまで以上に、人・信念・資源を繋ぎ、継続的に、しかも大きな功績を残すためのインフラのような存在になってきているのです。



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